漫画録 朔ユキ蔵「ハクバノ王子サマ」 '090531
ボクに思春期の「がきデカ」と「俺の空」に出逢って以来のHな衝撃(※2.)を与えてくれた「つゆダク」の作家・朔ユキ蔵の「ハクバノ王子サマ」10巻を読んだ。う~ん、なるほど~。
まず「つゆダク」の何がボクにHな衝撃を与えたのか?それは多くのTV好きには堪えられない芸能界の闇(笑)のHな世界に、これまた闇の牙城であるTV局の職員たる主人公が、H(挿入)はしてもいいが発射(忌野清志郎風に!)してはいけないといく過酷な使命を帯びて、Hなタレントたちと明るくヤリまくるその奇想天外な展開に驚き、そして登場する女の子の豊かでかわいらしい姿態表現に興奮したのだった。ボクはBOOKOFFに「つゆダク」の古本が並ぶのを日々眺めながらなかなか集まらない焦燥感に悶えたものだった(※3.)。
その朔ユキ蔵の次回作となればもう、Hエッチの連続かと思いきや、なんと恋愛心理劇・・・やられた!前作「つゆダク」なら当然100回はHしてるはずのボリュームになんとHは2回しかしない。これは作者としてはかなりの賭けだったと思うが、作品としてはかなりの成功を収めていると思った。
Hとは行為そのものだけでなく、“したい”と願う瞬間のそのものなのだ。
Hの絡みの塊のような漫画「つゆダク」にはなかった男女の「愛」が、この「ハクバノ王子サマ」には在る。Hは愛と切っても切り離せないものなのだ、だからみんな悩むのだと、なんと全10巻も伸ばしに伸ばして切って成就する。うん、これは朔ユキ蔵の底力だろうと思う。または朔に「つゆダク」と「ハクバノ王子サマ」を書かせた小学館の担当者がすごいのか。
この話の内容は、先に恋愛心理劇と書いた。そう、新任教師と、赴任した学校で年上の独身教師がお互いを意識しながら、激しく惹かれある。しかし新任教師には海外留学中の婚約者がおり、挙式も決まり諦めるしかない。また年上の独身教師にはかつて不倫した相手が同じ学校に居て相変わらずアプローチを駆けてくるし、新任教師の妹も在籍していて、兄と年上の独身教師との中を正義漢のようにひたすら疑う。新任教師の友人たちも、年上の独身教師の同僚や友人たちも結婚についてひたすら刺激する(ボクにはこの漫画に登場する名古屋弁のHな子だくさん野郎とそっくりな友人だがいる)。
たかが一組の男女がいろいろ悩み悶えて打ち解けるまで何と漫画で10巻延べ2000ページにもわたって書き繋げる逞しさ。これは村上春樹の「ノルウェイの森」的な、そしてグレアム・グリーンの「情事の終り」的な、エロチシズム溢れる作品に感じられた。
余談だが、ボクの知人(かつては友人だったが最近疎遠なので)にこんな奴がいる。大学の2年下の同郷の彼女と付き合い(そのため留年までした)、就職のため1年先に故郷の会社に就職し、彼女の帰郷を待った。翌年彼女も無事故郷の会社に就職しめでたく再開となるところで彼は海外転勤、結婚を約束して渡航・・・学生時代の濃密な3年間、そして遠距離恋愛の3年間を過ごし、いよいよ挙式まで半年と云うところで破談・・・男は帰国後日本の職場で同僚となった女性と急速に親しくなり、学生時代以来の彼女との恋は終止符を打った。
ふたりが結婚を決めたのは、濃厚な3年間の学生時代の思いを実らせたかったのだろう。しかし、余りに離れた時間が長すぎたし、就職してから別々の職場の人間関係の中で育まれる思い・・・簡単に云えば新しい異性との出会いの方が遥かに魅力的だったのだろう。結婚を破談された女性の気持ちはいかがばかりかと思ったが、これもヒトの不可解な思いの成せるドラマだろう。男と女なんてそんなもんだろう。
さて、先に「つゆダク」と「ハクバノ王子サマ」を書かせた小学館の担当者がすごいのか、と書いた。ボクは「つゆダク」に出逢って衝撃を受けたのち、作者のそれまでの作品を一通り読んでみた。「夢のような」、「モウソウマニア おんなのこ」、「無軌道メルヘン」、「チマタのオマタ」、「少女、ギターを弾く」。 「無軌道メルヘン」以外は今も所蔵している。初期の「夢の・・」はカット割りなどに無駄が多い、が女性の肢体の描写は独特な美しさがあり、現在にも引き継がれている。また無感情で過激なSEX描写は「つゆダク」登場まで一貫している。エロではあるがそれほどそそる漫画ではない。後の二作品完成度とは比べるべくもないが、それはそもそも作品の目的ではなかったのだからいたしかたない。しかしこれらの作品を読みながら、「つゆダク」に昇華させる可能性を見出した担当者の先見に拍手を送りたい。誰だか知らないが、その担当者なくして「つゆダク」も「ハクバノ王子サマ」もなかっただろう。
最後に、作者・朔ユキ蔵が女性らしいと最近知るに及んで、またまた興味が増した今日この頃である。どんな女性なのか?今後の作品にも妄想が膨らむ。ひたすら・・・
※1.「がきデカ」・作:山上たつひこ・'74年より週刊少年チャンピオン(秋田書店)にて連載
※2.「俺の空」・作:本宮ひろ志・'75年より週刊プレイボーイ(集英社)にて連載
※3.「がきデカ」と「俺の空」の二作品から受けたHな衝撃は別の機会に書きたい

