映画録 ENIGMA/エニグマ '090430
第二次世界大戦の暗号解読戦を描いた映画「エニグマ」を観た。ボクの両親たちが小国民と云われて校庭でいも作って竹やりで軍事訓練してた頃、世界中で闘った全体主義勢力=同盟国とそれ以外=連合国の闘いの下に、暗号の解読を巡る技術戦争があったのだ。
劇中の主人公たちの恋愛などはフィクションだろうが、下敷きとした解読のエピソードはきっとあったのだろう。第二次大戦は実際諜報戦でもあったわけで、日本など暗号を解読されたことで、司令官は撃墜され、海戦で壊滅的に敗北している。
UK・ロンドンの郊外にとある軍施設に、数学の天才たちが集められて、日夜暗号解読に勤しんでいた。歴史的に「Ultra」と呼ばれた組織がこれだろう。
ナチス・ドイツが前線との連絡に使う暗号装置「エニグマ」を解読した天才数学者のジェリコは、同じく解読移設に勤める女クレアに捨てられ、ノイローゼになり大学に戻されていた。しかし、ある日ドイツはエニグマの暗号を突如変更してきた。なぜだ?こちらに解読がばれたのか?時は連合国側の史上最大級の補給船団が大西洋上にあり、ドイツのUボート艦隊の標的にされつつあった。
映画は大西洋での覇権争いを巡る解読戦を縦糸に、ジェリコを虜にして捨てた女クレアの失踪を横糸に、ジェリコがクレアの同居人であるウォレスと一緒にクレアの疾走を暴いてゆく。そしてその背景に、ドイツ軍の暗号変更の裏に、解読施設内のスパイ工作の存在とクレア失踪が絡んでいると睨む英軍諜報部の動きが絡んでくる。
ジェリコは暗号解読よりもクレアの失踪の方に積極的で、ウォレスも優秀なのに上流階級出身でないため暗号収集の立場に置かれ愚鈍な男性上司に使われている身の上を嘆き、クレア失踪に入れ込む。機密事項を探り諜報部や警察に追われるシーンは、危なっかしく、かつ冗談のようだ。あの時代、日本では全体主義が跋扈し、「一億火の玉」なんて虚勢を張上げて国民を締め付けていた訳で、そんなところを見ると、イギリスの大らかさを感じた。まぁこれは映画なので事実とは違ったのだろうが・・・
暗号解読チームの構成は連合国側の事情が色濃く反映されていいた。当時連合国側にはUS・UKの資本主義経済とソ連・社会主義陣営が、共通の敵として全体主義国に対峙していた。だから、社会主義者や無政府主義者、ドイツに占領された国からの亡命科学者らが混在していた。そう敵の敵は味方なのだ。一緒に全体主義と闘った彼らも、戦後は憎み合って行くんだなぁ~
ジェリコとウォレスが消えた傍受記録を探しに郊外の信号傍受施設に行った時、そこで働くある女性がジェリコに尋ねるシーンが印象的だ。「私たちの仕事は役立っていますか?毎日訳のわからない記号を書き移して行くだけです。私たちは戦争に役立っていますか?」・・・そうなのだ、戦争で闘っているのは何も前線の兵士たちだけではないのだ。暗号をひたすら傍受して書き移す人々。言葉なのかデータなのか?日々イヤホンから聞こえてくる信号を書き移す仕事を支えるモチベーションは、世界を戦禍に巻き込んだナチス・ドイツに勝利することに自分の仕事が役立っているのだ、という思いだろう。
「 解読せよ 無限の文字にうごめく、謎の女と国家機密。 」 ・・・チラシの宣伝コピー・・・
暗号解読を巡る映画として記憶に残るのは「ビューティフル・マインド」だ。あの映画でもそうだったけど、暗号解読って結局軍事秘密=協力に直結するし、そう云う諜報活動を操る軍人ってかなりヤな奴。なんだよなぁ~
この映画で残念なことは、主人公ジェリコに感情移入できなかったこと。嫌いってわけじゃないけど、馬鹿な女に入れ込んじゃうところがいかにも愚かだ。だって「あなたの家に行きたいあ」って云ってH後に眠ってたら、机やカバンを探してる、なんて明らかに情報狙いって分かるだろうし。
ボクは純粋に「エニグマ」というドイツが作った暗号機を巡る物語りに興味を抱き映画を観、戦争の真っただ中の解読に携わる人々のドラマを観た。戦争は本当に様々なドラマを生む。それは戦争が一番人間らしく愚かなことだからだろうか。

